7年目の浮気

「…昨日はごめんね。」


飲み物を頼むと、茉莉花は話し出した。


「わたし加藤くんに、恥ずかしいところばかり見せてるね。」

「そんなことないよ。それより、何かあったの?」

「あのね、真紀がね、西野くんと結婚するんだって…知ってた?」

「え、そうなんだ。
西野、坂野さんのことずっと好きだったもんな。
そっか、上手くいったんだ。」

「えっ、そうなの?」

「実は篠原さんを送って行った日、西野もかなり酔っ払ってさ、俺も堂島も西野が坂野さんを好きなこと知ってたから、坂野さんに送ってもらったんだよ。」

「そうだったんだ…。
なんだか2人はすごくお似合いだった。
どうして今まで付き合ってなかったのってくらい…。
あ、もしかして、加藤くんのことも、堂島達は知ってるの?」

「いや、言ってない。堂島は勘がいいから気付いてるかもしれないけど。」


加藤はコーヒーをすすった。


「それで?」

「え?」

「拗ねちゃったわけ?坂野さんが急に結婚するから。」

「…。」

「篠原さん、結婚したいなら俺とすればいいのに。」

「加藤くん、ごめんなさい、わたし…、」


加藤はカップから手を離すと、茉莉花の手を握った。


「俺なんか、勝負できないくらい今の彼氏のことが好き?」

「…!す、好きだよ…!」

「本当?
じゃあ俺のことは鬱陶しい?」

「うっとう…しくは…。」

「俺って迷惑?」


加藤の茉莉花に重ねられた手が、大きくて暖かった。


「…加藤くん…!、」


その時茉莉花の携帯が鳴った。

芳雄からの着信だった。