「それ、好き?」 伊織くんがベッドから立ち上がり 私の隣に立って スッと そのDVDを手に取る 「あ………」 違う そう言いたいけど 口の中が一気に乾いて 舌が動かなかった 「いい話だよね。この映画」 ケースを見つめながら 伊織くんはDVDをプレイヤーにセットする 心臓が一気に冷たくなる そんな感じがした だってその映画は 金森先生の部屋で……… あの時 観ていたモノ いつまでも消せない あの時に 観ていたDVD