燃え盛る園田邸をあとにしたわたしたちは、穂高を救出するために雅邸に向かうことにした。

竜華雅は日本の古都の山奥に大邸宅を持っていて、レイが言うにはそこに穂高を連れて行った可能性が高いとのことだった。

雪音を一度家に連れ帰り、それからレイと二人で向かうと決めたわたしたちは、とりあえずこの近くに宿をとることにした。

本当は一刻も早く家に帰りたかったけれど、雪音を休ませるため、そして深夜の移動は追手に捕まる危険が増すからだ。

昼間なら彼らもそんなに派手には動けないと言うレイの意見で、わたしたちはA県の山の麓まで降りていき、そこで最初に見つけた安ホテルにチェックインした。

「神音ちゃん、君が部屋は絶対別々にって言うから2室とったけど、今は何が起こってもおかしくない状況なんだからね。雪音ちゃんもいることだし、何かあったら隣にいるからすぐに呼ぶんだ。いいね?」

古びたホテルの薄暗い廊下を歩きながらレイが残念そうに言う。

フロントでも3人一部屋にしようってすごくしつこかったけど、わたしは激しく抵抗した。

そりゃ、雪音がいればそんなめったなことはないと思うけれど。

レイがキス魔だって知ってるだけに、妙に意識してしまう。

雪音はさっきホテルに着く直前に再び目覚め、今はわたしと手をつないで歩いている。

雪音は園田先生にずっと大人しくするように暗示をかけられていたらしく、ずっと夢見ごこちだった様子で先生や沙耶に何が起こったかはあまりよくわかっていないようだった。