校舎を出ると、泉水が正門を出ようとしているところが見えた。

その行く手を阻むように1台の赤い車が止まる。

その中から、黒のスーツでビシっと決めているレイが出てきた。

「…レ…レイ!?」

レイは泉水を呼びとめて、何かを話しかける。

聞きとるには遠すぎたけど、わたしはさっきの要領を思い出し、走りながらレイの言葉に耳を済ませた。

「泉水ちゃんだよね?オレ、レイス。レイって呼んで。なんだか急いでるみたいだね。良かったらオレの車に乗ってかない?いいデートスポット知ってるんだ」

わたしは走りながら頭を抱え込んだ。

……な、なに考えてんだ!?

泉水はつんとした表情で、レイなど鼻にもかけないように言い放った。

「わたし、ナンパな男が一番嫌いなの。近寄ったら、殺すよ」

レイは寂しそうに両手を挙げて降参のポーズをする。

「でも、オレとキスしたくなったらいつでも言って」

そう言っていつもの女殺しのウィンク。

「ばっかじゃないの?」

泉水は吐き捨てるように言うと、近くを走っていたタクシーを止めてそれに乗りこんだ。

「……レイ!!!なにナンパなんかしてるのよ!?」

近くに走り着いたわたしを振り返ったレイの顔は、晴々しいほど満面の笑みだった。

「彼女に、殺されてみようと思ったんだけど、な」


…………え…………?