「どういうことだよ。」


絢音の心は分かりにくい。いつも笑顔で誰にでも変わらないその態度が絢音の心を隠している。そう思えた。


「私、ソロで音楽をする!」


絢音は拳を握りしめ真っ直ぐ前を見てそう言った。


「それでいいのか?」


「うん」


やわらかい風が吹き絢音の柔らかな髪がなびいた。


絢音の心の中にあるものが“諦め”か“決意”かは分からない。でも、コイツが選んだことを全力で応援することしか俺には出来ないんだろう。


そう考えていると、絢音は控えめに口を開いた。


「空たちに憧れてたの。音楽をしている時も、3人でいる時も、いつも楽しそうで。
そんな空たちだから、きっといつも最高の音楽を作れるんだろうって。

先輩や美咲たちとバンド組んで練習したり、ライブした時もすごく楽しくて。
こんな風にずっと音楽出来たら幸せだろうなって。」


絢音の横顔は決して悲しそうな横顔ではなかった。


「でも、先輩や美咲には夢がある。私は空たちとは違う。
だから、私は私の音楽を貫かなきゃって思ったの。

誰かに憧れ、真似た音楽じゃなくて私の音楽を。」