いつものレジの中。



「今日ヒマだねー?」

おもっいきり大きなあくびをしながら君が言う。
確かに今日は暇。
音楽ショップの金曜日の夜は入荷もなくて緩やか。
今日に限ってはお客さんも少ない。

「確かに暇ですねー」

一応袋にチラシを詰めながら相槌。
ホントに暇な時にやることと言えばこれくらい。

でもつまらない。

だけどやらないでぼーっとするとあくびの主に怒られる。

彼女もぐだぐだと試聴機に入れるCDを作ってる。
度々歌詞カードを見ながらコメントを書いてる。
あくびしてる割には動いてるみたい。





「あ。そういえば私来月で辞めるんだ。」

「え…?」



いきなりこの人は何を言ってるんでしょうか……?

と思ったのが伝わったらしい………。


仏頂面。


「ホントなんだからー。」


「………。」

思わず手が止まる…。



「だってさ、5月から教育実習行くから…時間なくなるし。…だからまぁあとは頑張りたまえ!!」



さっぱりと言い放った彼女に軽く背中を叩かれる。
ちょっと痛い。
けどそれどころじゃない…。
せっかく楽しいのに……





「なぁに?さみし?」



黙った俺にニヤニヤ笑いながら覗いて言う。
…いつもこうだ。

解ってるからあえてサラっと答える。



「別に。」



「なーんだ。」

彼女はちょっと残念そうにふくれてまた試聴盤をつくる。





「あ。」





不服そうに詰めていた彼女がまた何か思い出したように声をあげ、こちらを向く。



「何?まだあるの?」

「ん!辞める前に面白いこと教えてあげるね。」

「は?面白いこと?」

「そー。秘密ー♪お楽しみに!」





それだけ言って彼女は楽しそうに仕事をし始めた。