足の早さには少し自信がある私だけれど、相手は男だ。 いつだったか矢澤君に連れて来られた階段の踊り場で追いつかれ、腕を掴まれてしまった。 「待てって……」 (……あれ) この声は…… 恐る恐る振り向くと、それは矢澤君だった。 前に連れて来られたときと、ほぼ同じ状態になっている。 息を切らし涙目の私と、少し怒っているような表情の矢澤君。