矢澤君の歩幅についていけなくて息を切らした私に、矢澤君はきつい語調で言った。
「俺が、なんだって?」
その言い方に、矢澤君の顔を見る勇気を削がれる。
「……矢澤君は、女子に人気あるから、関わりたくない」
目の前の矢澤君の上履きのあたりを見つめる。
顔を上げる勇気はない。
「意味わかんねぇ」
変わらず、きつい。
「矢澤君がどういうつもりか知らないけど、私男子、苦手だし」
「普通に話すくらいなら、いいの」
「でもあまり構われると、他の女子が怖いから」
下を見ながら、声が震えるのをなんとか抑えて途切れ途切れに話した。



