「堀川さんて彼氏いんの?」
びっくりして矢澤君を見る。
肘をついて頭を支え、私を見上げていた。
「……は?」
思わず聞き返した。
「おい矢澤、そういうことは後で聞けー」
三木先生が言う。
クラスはざわついて、ニヤニヤした視線が私に沢山向けられていた。
「はーい」
矢澤君はやる気なさそうに返事をする。
「じゃあもう時間だから廊下に並べー」
三木先生の指示で、みんなが廊下に出始めた。
(終わった……)
よくわからないけれど、自己紹介という関門は乗り越えた。
(……矢澤君って、タラシ……?)
突然あんなこと言うなんて。
頭が真っ白だったからちょっと助かったけれど、さすがに突然アレはない。
私はみんなより少し遅れて廊下に出ると、既に出来上がった列の最後尾に並んだ。



