やっとのことで私の順番がきた。 何となく、矢澤君が椅子を倒したことを思い出してゆっくりと立ち上がる。 「堀川水雫です。水の雫と書いてゆなと読みます。えっと……」 『よろしくお願いします』で終わるつもりが、緊張で言葉に詰まってしまった。 (どうしよう) 頭が真っ白になってしまって、足が震える。 そこで、思いがけない言葉が真横から聞こえた。