「あ、すんません」 矢澤君は椅子を起こす。 その顔は、クラス分けを見ていた時の 『水の雫ってなんて読むんだ?』 と言った人だった。 前に向きなおると、矢澤君は言った。 「矢澤地斗です。大地の地に北斗七星の斗でくにとって読みます。よろしく」 ぶっきらぼうに言い終えると、矢澤君は座ってこちらを見た。 「よろしく」 小声で言った。 私は目を合わせずにうつむいて、小さくそれに返した。 びっくりしてつい見てしまったせいで、早速言葉を交わしてしまった。 でも、少し緊張がほぐれたかも。