「はは。名前は覚えてないよね。俺はタイチ。あらためてよろしくね」 「すみませんっ」 OBの顔と名前を覚えてないなんて、粗相もいいとこだ。 「そんな謝らなくていいよ」 「…はい」 「俺も初めわかんなかったもん…汐ちゃんのこと」 「は?」 見上げると、タイチさんは少し照れたように私を見て言った。 「汐ちゃん、大人っぽくなったよね」 「え……」 そんなこと、言われたのは初めてで、思わず頬を両手で覆った。