──なんだ、ビックリさせないでよ……
心の中でタイミングの悪い康平へ毒づくと深呼吸のあと、通話を開始した。
「はーい」
「敦ちゃん? オレオレー あのさー来月公開の映画、スイート・シーズンズ見に行かない?」
向こうは敦子の状態などまったく知らずに、いつものテンションで話をはじめた。
「姉貴がチケット譲ってくれてさー早苗さんも友里ちゃんもさっちゃんもが絶対泣くから見たくないって言ってさぁ」
「まぁ、泣くとマスカラ取れるし、映画館出たあと微妙な空気になるしね」
「で、一応知り合いからあたろうかなって。 敦ちゃんこういうマジ泣き恋愛映画好きでしょ。山岡ちゃんはあれでいて以外とアクション映画とか好きなんだよなぁ」
良く知ってるなと思いながらも康平の情報収集力ならそのくらいお見通しか、とため息をついた。
「たしかに好きだけど、河田君と行って泣き顔見られたくないから嫌」
「言うと思った。じゃ、ダメもとで山岡ちゃん誘おうかな」
「──あのあと平気そうだけど、私何もしなくて平気?」
敦子が少しだけ康平に気を遣った。
康平は千恵に告白をして──玉砕した。
玉砕当日敦子は康平と一緒にいたし、その後康平も千恵も特に変わった様子はみせなかった。
だが敦子は知ってる。
何も残さない失恋なんてない。


