東口で立ちつくしたままで、2人は動こうとしなかった。
「──私は──潤が好きだから」
「知ってるよ。だけど俺だって飯島が好きだ」
「私ね、潤が好きな気持ちを抱えたまま、他の人と付き合ったことあるよ。でもうまくいかなかった。だから」
「でも俺の場合もそうなるとは限らないだろ? 俺は、黒沢が好きなままなお前でもいいよ」
俊彦はそこまで言って、少し冷えてきた敦子の手をそっと離した。
2人に間ができてお互いの耳に入る音は駅の雑踏だけだ。
「──突然悪かったよ。また、メールする。急がなくていいから俺のことも考えてくれたら嬉しい」
俊彦のコートが翻るのを視界の端に入れて、敦子はうつむいていた顔をぱっと上げた。
「ぐっち!」
「──ん?」
「あのっ……付き合ってって言ってくれたの嬉しいよ。ちょっと考えさせてね。それと」
敦子も懸命に言葉を選び、必死に続けた。
「なにより! 推薦合格おめでとうございます!」
「おう」
俊彦は片手を挙げて敦子の言葉に応えると、自動改札を潜ってホーム階へ向かってしまう。
後ろ姿が見えなくなって、やっと敦子は深呼吸する。
震える代わりに握りしめていたケータイに視線を投げると一言だけ
「……あ、ありえないよ」
魂が抜けそうなか細い声をこぼした。
俊彦の思いを、全くと言っていいほど敦子は気づいていなかった。
敦子には「彼の普通」と「彼の特別」の違いを把握できるほど時間を共有していた認識がない。
だから、彼の優しさも気遣いも特別な何かではなく
それ全てをまとめて「堀口俊彦」だったのだ。
自分が恋愛対象になっていたのはいつからだろう。
なんだろう──この異常な恥ずかしさは。
ぐるぐるする脳内に渇を入れるように、突然ケータイが鳴った。
俊彦からのメールかと焦ったが、予想を裏切る康平からの着信だった。
「──私は──潤が好きだから」
「知ってるよ。だけど俺だって飯島が好きだ」
「私ね、潤が好きな気持ちを抱えたまま、他の人と付き合ったことあるよ。でもうまくいかなかった。だから」
「でも俺の場合もそうなるとは限らないだろ? 俺は、黒沢が好きなままなお前でもいいよ」
俊彦はそこまで言って、少し冷えてきた敦子の手をそっと離した。
2人に間ができてお互いの耳に入る音は駅の雑踏だけだ。
「──突然悪かったよ。また、メールする。急がなくていいから俺のことも考えてくれたら嬉しい」
俊彦のコートが翻るのを視界の端に入れて、敦子はうつむいていた顔をぱっと上げた。
「ぐっち!」
「──ん?」
「あのっ……付き合ってって言ってくれたの嬉しいよ。ちょっと考えさせてね。それと」
敦子も懸命に言葉を選び、必死に続けた。
「なにより! 推薦合格おめでとうございます!」
「おう」
俊彦は片手を挙げて敦子の言葉に応えると、自動改札を潜ってホーム階へ向かってしまう。
後ろ姿が見えなくなって、やっと敦子は深呼吸する。
震える代わりに握りしめていたケータイに視線を投げると一言だけ
「……あ、ありえないよ」
魂が抜けそうなか細い声をこぼした。
俊彦の思いを、全くと言っていいほど敦子は気づいていなかった。
敦子には「彼の普通」と「彼の特別」の違いを把握できるほど時間を共有していた認識がない。
だから、彼の優しさも気遣いも特別な何かではなく
それ全てをまとめて「堀口俊彦」だったのだ。
自分が恋愛対象になっていたのはいつからだろう。
なんだろう──この異常な恥ずかしさは。
ぐるぐるする脳内に渇を入れるように、突然ケータイが鳴った。
俊彦からのメールかと焦ったが、予想を裏切る康平からの着信だった。


