√番外編作品集

「飯島? ──久しぶり。堀口だけど」

「うんうん、久しぶりぐっちー。どうしたの?」

「ちょっと話があって──ほら、K大の推薦」

「あ、受けるって言ってたよね、受かった?」

「あぁ、さっき担任から聞いた。合格したK大教育学部」

「マジー!おめでたい! ちょっと待ってね千恵とか潤にも連絡するからこれからお祝いしようよ! あ、でも千恵は試験期間中は遊べないけど……潤なら来てくれるよ!」

電話の向こうではしゃぐ敦子の声が、とても懐かしく思えた。

あれから数ヶ月一切連絡を取らなかった。

もしかしたら忘れられているかもしれないと思ったがそんなことはないようだ。

俊彦はほっとしながらも、耳をくすぐる敦子のソプラノを目を閉じて体にしみこませた。

「そっち期末考査中か。じゃあ飯島も今勉強してたのかな」

「まぁそれっぽいことをして、マンガに手をかけようとしていました」

素直に告白すると、俊彦が笑ったのが分かった。

「ちょっとー笑わないでよ! ぐっちだって逃避したりするでしょー!」

「してないよ。ここ数ヶ月は本当にがんばったんだから」

「そっか。そうだよね。ごめんね」

努力が実ったのに、それを考えないような発言をしたことに敦子は反射的に謝罪した。

「黒沢とか山岡にも報告したいけど、今は飯島に報告したくてさ」

「うん、お祝いしよう。ちょうどいいや、ついでに分からないところ教えて欲しいな」

「いいけど二条西とやってる内容違うかもしれないぞ」

「今どこ?」

「円茉莉駅。飯島って最寄り円茉莉駅だったよな」

すごい近くまで来てるんだ、と敦子は立ち上がってコートを引っ張り出した。