玄関の戸を開けると母親の金色のパンプスだけが履き捨てられていた。 男物の靴は見当たらなかった。 急激にわき腹に痛みが走りその場にうずくまった。 どさり、と小さな音が廊下に響いた。 「誰?」 心臓を握られているような心拍数に、 内臓をぐちゃぐちゃにかき混ぜられたような吐き気。 小さな嗚咽がまた廊下に響く。 「・・・優衣?」 心を落ち着かせるために一呼吸、おいた。