201X年4月、K共和国はリーダーJ総書記長の生誕80年祝賀会に合わせて、日米を始め国連加盟国の全てが反対する中で、再び新型ミサイルの発射準備をしていた。

 今回は、中国もロシアも猛反対を表明し、発射を強行すれば国連安保理事会での制裁決議に賛成を表明していたが、K共和国のリーダーJ総書記長は「屁とも思わぬ」とコメントし、新型ミサイルの画期的性能を大々的にTVで報道させた。

 世界的にお馴染みとなった、とてつもなく攻撃的イントネーションで「親愛なるJ国家元首様のおかげで・・・」と始めるアナウンサーのおばはんが、塗り壁のような厚白化粧と若作りのファッションで滔々とニュースを読み始めた。

「我偉大なる国家K共和国は、世界最強のロケットで世界最大の人工衛星を打ち上げて、親愛なるJ国家元首様の誕生日を祝う」

 どうやら、世界中の情報を分析すると、世界最強のロケットであることは事実らしい。
2009年4月に、日米韓中ロの制止を無視して発射したテポドン2号は、結果的に日
本列島とアラスカの中間位まで飛んで、太平洋に落下した。

 3段ロケットらしかったが、順調に最終段階まで切り離されたのかどうかも分からず、
打ち上げたという人工衛星は、世界中の宇宙監視機関では発見することが出来なかった。

 人工衛星から流れていると主張していた470Hzでの「親愛なるJ国家元首様を称える歌」というのも、あらゆる受信装置をもってしても受信不能だったが、当のK共和国のTVでは、党・軍幹部がスタジオで「親愛なるJ国家元首様を称える歌」に聞き入っているシーンが繰り返し流され、国中は「人工衛星打ち上げ祝賀」ムードだったような映像が流れた。

 結局、世界の分析ではテポドン2号はどうやら失敗、人工衛星は願望、収穫は数千キロ飛んでいく事が証明された事位だった。

 特にアメリカは、アラスカまで届かない事や、いまだ弾頭に搭載できるような核の小型化にも到達していない事から、のんびりとK共和国を非難する議長声明でお茶を濁した。

 これに臍を曲げたJ総書記長は、直ちに凍結していた核開発を再開し、K共和国の非核化と安定のためのK6会議からも脱退して数年、ついにとてつもないロケットを開発したのだった。