俺は右手を平野さんの顔の前に差し出した。 「待ってたよ。今日初めての本命チョコ」 そんな冗談を言う俺に、平野さんは満面の笑みを浮かべてくれた。 否定しないの? 信じちゃうよ、俺。 本命のチョコだって。 「はい」 俺に小さな紙袋を渡した平野さんは、照れているのか、目を合わそうとしない。 「ありがと。さっき走ったでしょ?だめだな……無理しちゃいけないって言ったのに」 平野さんからのチョコ、もらっちゃったよ。 もう自分を止める必要がない気がしていた。