「そのままの姿勢で聞いてください。実は……僕は結婚していない。正確に言えば、まだ結婚していない」 言わない方がいいのに。 言ってしまうと自分が抑えられなくなるのに。 わかっているのに、言ってしまった。 そして、平野さんの反応を待っていた。 どんな顔をする? どんな気持ちになった? 「え?」 突然振り向いた平野さんが、俺の左手を掴んだ。 まじまじと俺の薬指を見て、 言葉を失っていた。