花見をしていても、考えるのは香織のことばかり。


女性がこの世で、香織だけのような気がしてくるから不思議だ。




「受付って肩が凝るんですよ~!!瀬名先生もんでくださいよ」




俺に寄りかかる受付の女性。


俺は軽く肩をもんだ。



「瀬名先生~!私もっ!!」





長年働いてくれている看護士の女性までもが俺に甘えてきた。





また思い出す。


香織の腰に手を当てたこと。


俺の手が、痛みを減らしてくれるんだと香織が言ったこと。




忘れることなんてできないよ。


短い恋だけど、経験したことのない恋。



見上げた夜桜は、切ないくらいに美しかった。