春が来た。





新しい季節がまたやってくる。






病院のみんなで花見に行こうという計画が持ち上がり、仕事が終わった後に、夜桜を見に行った。





「瀬名先生~飲んでくださいよ~」



俺に肩を寄せる受付の女性。



「俺、車だから飲めないよ」



俺は、渡された缶ビールを女性の手に戻す。




まだ五分咲きにも満たない桜。

だが、つぼみの夜桜も美しい。




一緒に見たかったな。

香織と……




嬉しそうにはしゃいで、桜を見上げるんだろうな。




会いたいな。



でも、もう終わった恋なんだ。


短い短い本気の恋だった。