自転車置き場でチョコを渡してるのは… 千佳。



相手は… もちろん篤史。




千佳が、うつむきながら差し出したチョコを…



篤史は受け取った。






「行こ… 美穂。」



90度方向転換し、美穂を引っ張って歩き出す。




「のぞみ…」



やだ…


そんな心配そうな声出さないで。



泣かないんだから。



絶対……。





「あんな光景、中学の時から散々見てきたよ。 どうって事ないって!」



そう言うのが、精一杯だった。







部室に来た千佳は、テンション高く、報告してくる。




「彼女いるっていうのは、噂だけだった。だけど、今は野球に集中したいから、誰とも付き合う気は、ないって…。 でもチョコ受け取ってくれたって事は、私のこと、嫌いじゃないんだよね!」





……千佳は、悪くない。




好きな人がチョコを受け取ってくれたら、誰だって嬉しいし、話したくなるだろう。




でも



その話を笑顔で聞いてあげるほど、私は心の広い人間じゃなかった。




とにかく静かに、その話題が終わるのを待った。