俺は『そうだね』と頷き、さくらのあとを追っていく。
春風が吹くと、あとからさくらの香水の甘い匂いが香ってくる。

改めて、成長したな、と思わせた。

さくらは一言も話さない。
どうしたのだろう?

こう気を使っていたら、自分までも話さなくなっていた。


『ここでいいよね?』


学校の道を右へと曲がり、少し歩いた場所にファミレスが一軒あった。

『あ、うん』


こんな場所にファミレスなんてあったんだ…とファミレスを見上げながら思っていると、さくらは俺を置いて先に中へと入って行った。
慌てて店の中に入る俺。
店員の案内で俺たちは禁煙席の、一番端の窓側へと案内される。


向かい合って座る俺たち。

『なにか頼む?』


こう言ってメニューを渡すさくら。
俺はそれをさくらから受け取り、メニューを開ける。

時間帯はもう昼なのだが、お腹は減っていない。

気持ちがいっぱいで…
モノが口を通らないような気がしたんだ。