先生が締めの言葉を言う。
そしてみんな一斉に席を立ち、続々と教室から出ていく。

帰りの支度をし終えた時、隣を見るともう美羽の姿はなかった。


『ま、いっか』


本当は『またね』と言いたかったのだが、本人がいないのでは意味がない。
俺はまた明日言うことにした。


『ヒカル、帰ろうぜ!』

携帯をいじっているヒカルの背中を叩いて、帰ろうと提案をする。
するとヒカルは何かを思い出したかのように、慌てて携帯を閉じて俺を見てきた。


『わりぃ!俺用事あるんだ!だから先帰るわ。じゃあな!』


こう言って、俺を教室に残し、風のように去っていくヒカル。
何が起こったのか一瞬分からなかった。

用事?
用事とはなんだろう?
こう考えていると、
『雅?』と俺の名を呼ぶ、さくらの声が聞こえてきた。


『え?なに?』


目の前に現れたさくらは、とても寂しい表情をしていて、今にも泣きそうだった。



『ねぇヒカルは誰を好きなの…?』



この息詰まる空間で、
またなにかが始まる─…