だけどその行為はあっさりと終了するのだ。
なぜならば思い出すことが出来ないから。
遥斗の顔はすぐ思い出すことが可能なのに、先生の場合、そうはいかない。
『…え…思い出せないです…いつ頃ですか?会ったの』
これ以上思い出せそうとしたら、頭がパンクしそうだ。
聞いた方が早い。
『確か君が産まれた時かな!』
にっこりと白い歯を見せて笑う先生。
俺は先生の発言についつい笑ってしまった。
俺が産まれたときに会ったって?
そりゃ、覚えてるわけない。
産まれた時の記憶などないに等しいから。
『分かるわけないですよ?それ』
『だよな!ごめん、ごめん!光輝さんは元気か?』
『元気ですよ!今遥斗の専属のスタイリストしてます』
世間は狭い。
よく耳にする言葉。
この時、まさにこの通りだと思った。
世間はとても狭い…
だからキミはこんな世界が嫌いなのかな─…


