爺ちゃんはいなくなるのには早すぎる年齢だ。
今でも写真を撮っていて、まだ仕事が出来る年齢。


でもなぜ?
なぜ今なの?



『今から病院行くから』

母さんは静かに受話器を置いて、つけていたエプロンの紐を外す。


『百合、お義母なんだって?』


『…お父さんが心臓麻痺で…亡くなったって…』


涙を流しながら、母さんは父さんと美月に説明をする。
絶句したのは間違いないだろう。

父さんは慌てて財布とキーケースを持ち、リビングから出ていく。


『雅!美月!行く?病院…』


母さんの問いただしに、俺は首を横に振った。

行けるわけないよ。

何のために行くんだよ。爺ちゃんが死んだのを確認するために?


…行けるはずないだろ…


『俺も行かねぇ…詳しく分かったら連絡して』


美月の言葉が男気で溢れている。
俺はただ、肩を震わせて泣くしか出来なかった。