『爺ちゃんな、この世界に生まれてよかったと思っている。幸せすぎた。ありがとうな…雅…』


なぜ、最後にこんな言葉を言ったのか分からなかった。
俺はただ頷くことしか出来なくて…。


ゆっくりとドアが閉まっていく。
走り出す電車。
俺は爺ちゃんを見つめて、何度も手を振る。
爺ちゃんも手を振りかえしてくれた。


見えなくなるまで…。


そして空席へと腰を下ろして、暗くなった街を見つめる。
爺ちゃんが言った言葉を胸に大事にしまい、再び涙を垂らす。



『人生は…人のために生きる…か…』


教えてもらったこと。
絶対に忘れたりはしないよ。
絶対に…。

そして俺は、俺のために笑ってくれる人の写真撮っていきたいと思う。
いつか、爺ちゃんのようになってみせる。


電車は地元へと走っていく。
長いトンネルを抜けたら、もうそこは俺の地元だ。

行きより帰りの方が早く着いた気がする。
気のせいかな?

俺は眠たい体を引きずりながら家へと向かった。