昔、爺ちゃんに聞いた話なのだが、ここは昔、こんなにも田舎ではなかったらしい。
ビルが多く、都会だったみたいだ。
だが年が増えるごとに、大手の会社はもっと都会の場所に会社を移動したらしい。
高いビルは壊され、今は田畑に変わったという。
爺ちゃんはこっちの方がいいと言っていた。
でも静かすぎるのも嫌だと言っていた。
俺は今の方が好きなんだけどな。
太陽が俺たちに影を作ってくれる。
徐々に懐かしい景色が広がる…。
見え始める大きな桜の木。
そしてその隣にある、
二人掛けのベンチ…
『すっげぇ久しぶり…』
前で歩く爺ちゃんの背中に向かって言葉を吐く。聞こえていないのか、爺ちゃんの反応はなしだ。
爺ちゃんの背中がどこか悲しそうで…
俺は思わず足を止めてしまう。
腰が少し曲がったせいかな?
錯覚かもしれない。


