もう忘れなきゃと思っていても、頭の中のどこかで陸を考えていて…
体の中のどこかで、陸を求めていて…。

忘れることなんか出来ないのかな─…


あたしはこんなことを考えながら家に帰って行った。
疲れ果てた体を引きずり、暑さと戦いながら家に行く。


『ただいまぁ…』


『あ、美羽!明日夏祭り行く?』


あたしが靴を脱いでいる時に、母親が後ろから来て、あたしに聞いてくる。

あたしは母親を見て『行くよ』と言い、二階に上がろうとする。


『そう。浴衣着ていく?』


母親の言葉にあたしは悩まされる。
夏祭りといったら浴衣が定番だ。
去年は着ていかなかった。
浴衣は大人というイメージがあったから。
だから少し抵抗があったのだ。

でもあたしは今中学二年生。
成長期、真っ盛りだ。

少し大人になってもいいだろう。


『着てく!!』


聡に見て欲しいのではない…。
あたしは陸に見て欲しい…