本当は振り向きたくなかった。
だって必ず陸はいるから…。

聡も最近声変わりをしたのだろう。
声が低くなり大人っぽさを増した聡。
でもあたしの体は無反応。
熱なんて帯びない。
陸のように反応しない…


『な、なに?』


あたしは勇気を出して、振り返る。
夕日があたしの体を包み込んだ。


『明日、5時に迎えに行くから!待ってて!!』


明日は夏祭り。
聡と初めて出掛ける日だ。
聡はなんて思っているのかな?
罪悪感が積もっていく…。


『うん…分かった…。じゃあまた明日ね…』



素っ気ない態度をとってしまうあたし。
何故ならば、視線を感じたのだ。
誰かは分からなかったが、どこからか視線を感じた。

陸であって欲しい、と、夕日に背を向けて願う。


もう忘れるしかないのかな…
この長年想ってきた気持ちに終わりを告げなくてはダメなのかな…



陸はどんな気持ちだったの?

あたしに視線を送っていたのは…陸だったの…?