世界中探したっていないだろう。
別れすぐ気持ちがどこかへ行ってしまう人なんて。
絶対どこかで心残りしているはずだ。
それだけ好きだったら…沢山傷だって負うはずだ。
俺達はバスに乗り込んで、ゆらゆらと揺られながら、今日から通う高校へと目指す。
移り変わる景色を、俺は切ない気持ちを抱きながら、じっと見つめていた。
俺はこの時まだ知るはずもなかったんだ。
これから先、この切なさが、更に切なさを増すということに─…
バスに揺られること数十分。
バスは予定通りの時刻に到着をした。
バスを降りてすぐに、俺は大きく背伸びをする。
『着いた!』
『はぁ…やっとか…』
乗り物が嫌いなヒカルは、顔色を悪くして、溜め息を漏らした。
高校に着くと、まず初めに目につく場所は、桜並木だ。
桜吹雪が舞う中、桜並木はまだ慣れない制服を着ている新入生たちで溢れ返っている。


