幼稚園に行くにつれ、
沢山の園児と、母親が集まってくる。
あたしはしっかりと母親の手を掴み、緊張と闘っていた。
胸が苦しい。
こんなに緊張したのは、去年のお遊戯会以来だ。
『大丈夫よ。美羽ならすぐ友達出来るからね』
あたしを安心させるかのように、優しい言葉を母親が言う。
あたしはこくんと首を縦に振って、幼稚園の前に立った。
楽しそうに遊ぶ園児たち。
笑い声が広がっている。母親はあたしを置いて、園長先生らしき人と何かを話している。
『はぁ…』
溜め息を吐いて、母親と話が終わった園長先生があたしのところに来た。園長先生は眼鏡をかけていて、少し白髪が混じっている。
眼鏡の奥には優しい瞳。怖いという印象はない。
『美羽ちゃん、先生と行こうか?』
『うん…』
あたしは母親に片方の手で手を振って、もう片方の手で園長先生の手を握る。
母親はずっと笑顔のまま、あたしを見つめていた。


