涙さえ流さない美加の言葉が、こんなにも深く俺の胸に突き刺さっているとは。
この時初めて気付いた。

『振られたけど平気』
『どうでもいいさ』


こう思っていた俺の気持ちは偽物だったのだろうか?

ぐるぐると色々なことが駆け廻る。


『どした?雅?』


『…誰から…聞いた?』

ゆっくりと口を開き、同じくらいの身長のヒカルを真っ直ぐ見つめた。


『さっき美加からメールが来てさ。別れたって。だから聞いたんだよ。どーせ雅は泣いてたんじゃねぇかと思ってさ』


ヒカルはこう言って親譲りの八重歯をちらっと見せた。


『ば、ばかじゃねぇの?泣くかっつーの。あいつのことはもう終わり!ほらバス来たぞ!』


これも偽りの気持ち。
そんな簡単に忘れられるわけない。
だって美加は俺の大好きだった人だから。