こう言って陸はベランダから姿を消した。
陸の着ていたヒーローのパジャマが、あたしには全て陸に見えたの。

あなたはあたしのヒーローだったのかな?


『美羽、明日から幼稚園も始まるんだし、早く寝なさい』


あたしの部屋に母親が入ってくる。
そしてベランダに足を踏み入れた。
ぽんっとあたしの頭を触れる母親。
見上げると、そこには笑顔があった…。



『美羽、この部屋気に入った?』


あたしは踏み台をひょいっと下りて、母親の温かい手を握る。


『うん!気に入ったぁ』


だってあなたと初めて逢った場所だもの。
あなたの笑顔を最初に見た場所だもの。


まだあたしの小さな心臓の鼓動が速くなっている。
ふと陸の部屋を見ると、電気は消されていた。
もう寝たのだろう。


今日はいい夢見られそう。


あたしはまだ慣れないベッドで、陸を思い出しながら、眠りについた…。