以前、母親にあたしの名前の由来を聞いたことがあった。
その由来とは、『美しい羽でどこまでもいけるように』
母親は笑顔でこう言っていた。
それからあたしは自分の背中に羽があると思っているのだ。
…─でも、飛べることはない。
今でもあなたのところへ行きたいと思っているの─…
『…ひどい…』
あたしの瞳からは悲しくて涙が流れていく。
その涙は握りしめていたクマ太へと落ちていった。
『泣くなよ!ごめんね?美羽…』
届くはずもないのに、
陸は腕を必死に伸ばして、泣くあたしを触ろうとする。
初めて陸に名前を呼ばれた時、少しだけドキッとしたの。
小さくても恋はするのだ。
まだ子供だけれど、
人を愛せるのだ…。
あたしは涙を服の袖で拭いて、首を横に振る。
『…いいよ。大丈夫だから!』
『良かったぁ!あ、俺そろそろ寝なきゃ!じゃあな!美羽』


