両親がトランクから荷物を取り出す。
荷物はそこまで多くない。
父親と母親が平日、あたしがいない時に着々と準備をしていたらしいから。
あたしは父親に自分の部屋を案内してもらった。
あたしの部屋は二階。
布団ではなくベッドがいいと何度か縋ったっけ。
『ここが美羽の部屋だよ』
連れて来られた場所のドアに《美羽》と可愛くペイントされたプレートが貼ってあった。
あたしはドアを開けて中に入る。
部屋の中に入ったあたしは言葉を失った。
『ここが…美羽の部屋?』
壁は女の子らしいピンク色。
絨毯もピンク色だ。
カーテンはクリーム色。そして端に置かれた、ベッド。
ベッドカバーは花柄だ。
『美羽の部屋だよ』
父親を見上げると、
優しく微笑んでこう言った。
あたしは嬉しくて、嬉しくて…
クマ太を落としてしまった。
…もし、この部屋じゃなかったら…
陸との仲は深くなっていなかったかな…?


