こういう理由もあってか、俺はヒカルの存在を消したくないのかもしれない。
好きな写真を分かち合えるなんて、最高だろ?
俺は空に向かって満面な笑みを浮かべる。
悲しくたって、爺ちゃんの写真があれば元気になれる。
『そういえばさ、雅?お前、美加と別れたんだって?』
だがヒカルの何気ない一言で俺の顔から笑顔がなくなっていく。
その言葉を聞いた途端、俺の脳は働かなくなり、動きを止めた。
バス停に向かう足は、突然向かおうとはしなくなった。
『え…』
言葉までもが出なくなったのか。
俺はただその場に立っていることしか出来なかった。
『別れたのかよ?』
先に進むヒカルが、くるりと後ろを振り向いて、今度は短めに同じ言葉を俺に投げ掛ける。
『…あ…えっと…』
まだどこかで詰まっている言葉。
今朝の美加の言葉が蘇る。
《あたしもう雅のこと好きじゃないの》


