そう言って父さんは俺の手にそれを渡してきた。俺はそれを不思議に見る。
『…あ…』
『お爺ちゃんが一番大切にしてる写真だそうだ』
父さんが渡したもの。
それはだいぶ古くなった一枚の写真だった。
その中に映る写真は、桜の木とひとつのベンチ。その2つを幻想的に見せる夕日のオレンジ色。
また爺ちゃんの写真に惚れ込んでしまう…。
『大事にする!ありがと!じゃあ行ってきます』
俺はその写真を握りしめて、元気よく家を出て行った。
光溢れる街の中に─…
玄関の前には、携帯をいじっている親友のヒカルがいた。
『ヒカル、お待たせ!』
『おせぇよ、ばーか』
ヒカルの名前は、斉藤ヒカル。
父さんの親友の息子。
そして爺ちゃんの親友の孫にもなる。
俺たちは小さい頃からずっと一緒で、喧嘩なんてしたことない。
何でも話せる、兄弟のような関係だ。
ヒカルは優しくて、俺の気持ちを分かってくれていて、それに誰でも羨ましがるくらいの美男子。
俺の自慢の親友なんだ。


