『父さん、ありがと』
『雅が元気になったら、安いもんだよ』
父さんはワックスの蓋を閉めながら言う。
そんな父さんを見て、俺は小さく微笑む。
ありがとう。
『雅?学校行く時間じゃない?ヒカルくんが迎えに来たわよ?』
すると母さんが部屋のドアを開けて、俺の部屋を覗き込んだ。
俺は母さんに言われて気づく。
もう学校に行く時間だと。
慌てて昨日準備しておいた新品の学生カバンと携帯を持って部屋を飛び出た。
『やっべぇ…父さんありがとな!じゃ行ってきまーす!!』
俺は勢いよく部屋を飛び出て、階段を駆け下りた。
そして玄関で真新しい茶色のローファーを履いているとき、視界に一枚の紙切れが入ってきた。
『これ、持っていきな?』
後ろには父さんが立っていて、俺は父さんが差し出したものを受け取る。
『これ…』
『お爺ちゃんに渡されたんだ。雅に渡せって。きっとお守りになるから』


