時は過ぎていく。
そんな自分の心理状態を抱えながら、俺は必死に抑えている。


そしてもう夕方が近い頃。
みんな学校が終わったという喜びが表情に出ていた。
教室がオレンジ色に染まっていて、なぜかそんな色をしたフルーツを連想させた。


『ヒカル、帰るか?』


帰る支度をしながら、背を向けるヒカルに言う。

『わりぃ!俺、先生に呼ばれててさ!ちょっと待っててくれないか?』


ヒカルは申し訳なさそうにこう言う。
これからの予定は特に何もなかったし、ヒカルに『いいよ』と言った。

ヒカルが先生の所に行っている間、俺は一人屋上へと足を進める。


美羽はいないだろう。
一人で帰っていく姿を教室から見ていたから。


古びた鉄のドアを開けると、そこら美羽がいつもいる屋上。
屋上も教室と同じようなオレンジ色で染まっていた。


俺は屋上の真ん中で座り、顔を上げる。
雲ひとつない茜色の空。

うん─…綺麗だ。