屋上に広がる美羽の啜り泣く声。
美羽は泣き虫なのだ。
誰よりも、泣き虫な女の子なんだ。

そんなの分かってる。
だけど俺は何もしてあげられない。


『どうして…どうして…そんなこと言うのよ!!』


下を向いたまま、震える声で叫んだ美羽。
俺はそんな美羽に動じず、言葉を並べていく。


『美羽に現実を見て欲しいから。陸はこの世界にいないって』


自分でも思う。
冷たい言葉だなって。
こんな言葉を言われたら誰だって傷つくに決まっている。
分かっている、そんなこと。


…美羽は黙ってしまった。
体勢を崩して、膝を地面につける。
そして声を殺し、丸まって泣いていた。


空が一段と暗くなる。


『あんたに…何が分かるの?』


ゆっくりと小さい声を漏らす美羽。
俺は一歩だけ美羽に近づき、耳を澄ませる。


『え?』


『あんたには分かるの?好きな人に一度も好きだって言えなかった、あたしの気持ち…!!』