自分でも分からなかった。
どうしてこんな言葉が俺の口から飛び出たのか。また、美羽を傷つけてしまうのだ。
そんなこと分かっているのに…言ってしまうんだ。
俺の言葉を聞いた美羽は、目を丸くしこちらを見る。
硬直する美羽。
それだけ衝撃的だと語っているようだ。
『な…んで?』
美羽に優しくしてはだめだ。
心の中の俺が叫ぶ。
俺の優しさは美羽には届かないから。
だから、冷たい言葉しか言えないのだ。
本当は思っていないのに─…
『空に陸はいないよ。どんなに空を見たって』
思ってもいない言葉。
嘘の塊で出来た言葉。
美羽の心に、ひとつ…
傷を増やす言葉…
美羽は俺から姿勢をずらし、手すりを持ったまま下を向く。
何かに耐えるように…
手すりをぎゅっと握る。
優しくしてはいけない。俺はただそんな美羽を見ることしか出来なかった。


