苦しいよ、体が。
辛いよ、心が。

体が心が俺に警告をしている。
きっとさくらもだろう。だから握る手が、震えているのだ。


すると握りしめていた俺の制服を離し、さくらが勢いよく駆け出していく。
揺れる髪の毛…
ほのかに香る香水の甘い香り。


ヒカルと美加の前を走っていったさくら。
この二人に間違いなく見られただろう。


『さくら!!』


そんなことどうでも良かった。
むしろ二人に気付いて欲しかったから…
さくらの後を追う。
二人の前を通って。

心配なんだ。
またさくらは転んでしまうのではないかって。


さくらが向かったのはきっと屋上だ。
走る足音が上から聞こえる。
それと…屋上のドアを開ける音も。

呼吸は辛くない。
慣れているから…


屋上へと行き、さくらを探す。
すると屋上にいたのは、さくらではなく美羽だった。


『あれ…さくらは…』


息を整え、空を見上げる美羽に聞く。
美羽は顔の角度を変えずに、ただ、ただ…
上を向く。



『泣かせたのはあんたなの?』