さくらの表情は、暗く、目の下には隈が出来ている。
化粧はしてないようだ。もうすでに目が涙で潤っている。


俺は靴を履くことさえ忘れ、裸足のまま家を飛び出した。
そしてさくらの目の前まで行く。


『お前…』


《どうした?》より先に出てきた言葉。
本当は先に言いたかったけれど、もし言ってしまったら余計さくらを悲しくさせるかもしれないと思い、ぐっと堪える。


『み、雅ぃ…』


振り絞るような声で、
俺の名前を呼ぶ。
そんな声を聞いた俺は、さくらをどこかで同情していた。

精神的に苦しいのは、
痛いくらい分かるから…

『大丈夫かよ?どうした…?』


この俺が言った言葉を聞いたさくらは、案の定、涙の加速を速くした。

俺は手を伸ばし、さくらの頭に軽く触れる。
サラサラで艶やかなさくらの髪の毛は、俺の手を滑らせる。


辛いよね。
こう心で言いながら、
何度も何度も触れた。