その言葉に戸惑ってしまう。
俺は何も言わず、もう一度隣にいる彼女を凝視した。

スカートを履いているし、外見は女の子だ…
でもなぜ《俺》と?

訳が、分からない。

でも女の子にそんなこと聞けるはずがない。
俺は必死になって言葉を選んでいた。


『女が俺って言ったから驚いてるんだろ?』


ぎくっと反応をする俺。バレていたのか。
俺は素直に『うん』と言う。
素直になったら理由が分かるかもしれないからだ。


彼女は桜の木を見つめ、自分のことを話し始める。


『俺の名前は黒川春香《くろかわ はるか》自分のことを俺って言うのは自分を女だって認めてないから』



また、言葉を失ってしまう。
きっと彼女は男になりたかったのだ。
だけど神様は意地悪で、彼女に女の体を渡してしまったよう。

この時、神様は悪戯好きなのだと知った─…