彼女は俺の手を引っ張って、歩き出した。
俺はそんな彼女に引っ張られ、足を動かす。
家とは反対の方向へと歩いていく俺達。
太陽は一番高いところまで昇り、俺達を見守ってくれているようだった…
歩いていくと住宅街がなくなり、静かな街へと色を変える。
彼女が向かっている場所はどこなのだろう?と不思議に思うが、聞ける状態ではない。
だから俺は何も言わずに着いていく。
『…ここだ』
足を止め、彼女が指さした場所とは、静かな公園だった。
桜が沢山植えられていて、花見をするには打ってつけの場所と言えるだろう。
でも何で公園なんだ?
俺達はベンチに座り、
お互いなにも話さないでいた。
『…ここって?』
先に口を開いたのは俺の方。
この空気に耐えられなかったのだ。
『ここは美羽と俺の地元だ』
彼女の言葉に不思議に思う自分。
なんて言った?
もう一度彼女の言葉を思い出す…
彼女は確かに《俺》と言った。


