「お前は、えっと桂だったよな?」

「はい」


やっぱり、無表情で頷く桂くん。


「先に静香を連れ帰ってくれねぇか。こいつに少し話があるんだ」


と、千鶴の頭をがっちり掴む。


「はぁっ!?嫌やで!ウチは静香と帰るもん!!恭兄と話す事ら何もないわ!」


そう食いかかる千鶴の鼻の頭は、見事に赤くなっていた。

桂くん、容赦なく殴ったのね。


「いいから、少しだけ残れよ」


そう言って、ボソッと何事かを千鶴の耳元で呟く。

すると、急に千鶴は大人しくなって、珍しく素直に頷いた。


「桂、…静香を連れて先に帰れ」

「……ああ。じゃあ静香、帰ろうか」


桂くんは、促すように私の背に手を添えた。

千鶴の様子が、何だか気になるけど…。


まぁ、いいや。

千鶴のガミガミから解放されるんだし。


「恭輔さん、お世話になりました」

「気にするなって。もう倒れるまで、無理するんじゃないぜ」





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