Rainy-Rainy

「ゆ、遊里」


俺を見つめたまま入口に立ち尽くす、遊里に片手を上げて声を掛ける。

若干引き攣った笑顔で。


ちぃ。

今日、遊里がシフト入ってたのを失念していた。


「今日、絶対ゼミに出るって約束したよね」

「え、あ、あぁ」


そんな約束したような気がする。

確か、ゼミの共同発表で、調べるのもレポートを纏めるのも遊里が全部一人でやるから、発表は俺にって。

あ!


「すまん、すっかり忘れてた」

「忘れてた、じゃないよ。ぐすっ、私一人で発表しなきゃいけなかったんだよ?」


遊里は今にも泣きだしそうに、大きな目いっぱいに涙を浮かべた。


あー、やばい…。

餓鬼の頃から、ずっとそうなんだが、遊里はちょっとした事ですぐに泣くんだ。

で、こいつが泣くと決まって、ロクな事になった試しが無い。


「お、おい。泣くなよ、遊里。頑張ったんだろ?上手く出来たんだろ?」


俺は必死に下手な笑顔を取り繕って、小刻みに震える遊里の頭を撫でてやる。

遊里は目元を手の甲で拭いながら、コクコクと頷いた。


「俺なんて、いなくても良かったろ?」

「……られた」

「へ?何だ……てっ!」


遊里は近付いた俺の耳を掴んで、口元まで引っ張った。

そうして、すぅっ、と深く息を吸い込んだかと思うと、一拍空いて…


「恭ちゃんがサボったせいで怒られたのよーーーーっ!!」