-Kyousuke-
店の外は酷い雨だ。
その雨に感化されてか、俺は憂鬱な面持ちで、カフェ『アモーレ』のカウンターに突っ伏していた。
「恭輔、景気の悪い面で其処に座るな」
低めの声でそんな言葉が降ってきて、俺は僅かに顔を上げた。
三十代前半のやけにガタイのいいおっさんが、グラスを拭きながら、こちらをじっと見ていた。
名は、御山宗一郎。
肩程までの髪をオールバックにした、大人の雰囲気漂う色男だ。
ちなみに俺の直接の知り合いではない。
咲芽商店街の中程に建つこのカフェでバイトをしている、友人の紹介で知り合った。
「最近、調子悪くてさ」
「お前でも調子が悪い事があるんだな」
「酷いな。俺を何だと思ってるんだよ」
体を起こして、そう返してみるものの、すぐにカウンターの上に逆戻りだ。
あー、糞。
調子出ないな。
「風邪か?」
「いや、メンタルな問題。ちょっと気に掛かることがあるだけ」
「そうか。まぁ、何だ。元気を出せ」
それっきり、店長はまた口を閉じ、仕事に戻る。
店内にはまた静寂が戻り、雨音に交じって、キュッキュッとグラスの磨く音だけが鳴り響く。


