Rainy-Rainy

桂くんは優しい。


千鶴みたいに口に出したり、はっきりと行動で示したりはしないけど、困った時はいつだって、気付かない内に手を引いてくれている。

ずっと昔から、変わる事の無い態度で。


二人に心配されたり、助けられる事を嫌がる私だけど、結局、いつの間にか桂くんに助けられている。

ホント、桂くん達には頭が上がらないよ。


もし晶人さんがいなかったら、私、絶対に桂くんのこと好きになってたんだろうな。

優しいし、背も高いし、顔も頭も良いし、ついでに鍵谷家はお金持ちだから。


「どうした?」


桂くんは本から顔を上げて、私を見る。

ついつい覗き込むようにして、彼の顔を凝視していたせいで、不信に思われてしまったらしい。


「ん…な、何でもない」

「なら、見つめないでくれ。こそばゆいというか、居心地が悪いんだ」

「あはは…ごめんごめん」


今朝練習して来た笑顔で、ごまかす。

しかし一瞬でも玉の輿、なんて考えたせいで、どうにも罰が悪い。


「……」


ごまかした事に気付かれたのか、それとも私の下心に気付いたのか、桂くんの無表情が少しだけ曇ったような気がしたのだった。